2008年03月23日

ダライ・ラマの転生

チベット仏教の特徴の一つは、生まれ変わりを信じていることです。

特にダライ・ラマやパンチェン・ラマのような突出した高僧たちは、死後必ず国内に転生すると言われています。



高僧の生まれ変わりを認定するには、幾多の慎重な調査が行われます。


まずは国中から、知らないはずのことを知っている子供や、啓示的な夢を見た母親を探します。

さらに占いや神託による多くの調査をした後に、候補者の子供を絞り、最終テストをします。



現在のダライ・ラマ14世の場合は、チベットの小さな農家の9人目の子供として生まれましたが、3歳の時、変装した探索隊の一行が彼のもとを訪れ、先代のダライ・ラマの所持品をいくつもの品物にまぎれさせ、それを正確に当てられるかどうかテストしました。


その結果、変装した一行の中から、元側近を識別し、品物の中から、先代が愛用した数珠、儀式用の太鼓、愛用した杖を、全て間違いなく選び出しました。

杖の時は、いったん違う杖を手にしたそうです。

しばらくそれを持って歩いた後に、本物と持ちかえました。

最初に持った杖も13世が使用したもので、その後他の高僧に贈ったものでした。

これには探索隊のメンバーも大層驚いたそうです。


ダライ・ラマの転生



それらの調査により、農家に生まれた幼き子は、チベット仏教最高位のダライ・ラマとして認定されたのです。




ここで重要なのは、転生したダライ・ラマ探索の際に、啓示や神託を受け重要な役割を果たすのがパンチェン・ラマで、転生したパンチェン・ラマ探索の際に啓示を受けるのがダライ・ラマだということです。




平成元年、パンチェン・ラマ10世が公の席で、中国のチベット統治を批判したその4日後、謎の急死をとげます。

すぐさま中国政府は、転生するパンチェン・ラマ(11世)を、中国政府自らが選ぶと宣言し、探索隊を編成します。



パンチェン・ラマの転生を探る重要な能力を持っているダライ・ラマは、何度も中国政府に、転生者を探す手伝いをすると申し出ますが、断られます。



結局はダライ・ラマが正規の手続きにのっとってパンチェンラマ11世を探し出すのですが、数日後、その少年は中国当局に拉致されてしまいます。


ダライ・ラマの転生

わずか6歳でした。

今もどこかに幽閉されているそうです。

現在19歳になります。




その後中国政府は、本物のパンチェン・ラマ11世を発見したと発表し、現代に至っています。



真のパンチェン・ラマの認定は、チベットの将来にとって大きな意味を持ちます。



72歳の高齢になったダライ・ラマ14世に万一のことがあった時はどうなるのでしょうか。

このままでいけば、中国政府に都合のいいパンチェン・ラマが、中国政府に都合のいいダライ・ラマを選び出し、その瞬間にチベットの自治の夢も、チベット仏教の伝統も終焉してしまいます。




中国政府にとって、チベット民族も、チベット文化も、チベット仏教も、人類にとっての貴重な宝だという認識はありません。

彼らにとっては、その国土こそが興味の対象なのです。



チベットが消滅する様を、黙って見ているわけにはいきません。

非力ながらも、我々が声をあげて日本政府を動かし、中国政府に抗議し続けることだ思います。



このことが人々の記憶から消えませんように。




ダライ・ラマの転生   ダライ・ラマの転生





裏ブログの「かんながら」にも、チベット問題とその歴史を紹介しています。



Posted by Toshiro Abe at 10:20│Comments(7)チベット問題
この記事へのコメント
知りませんでした~。応援します!
Posted by ゆめまくら at 2008年03月23日 10:54
阿部さん こんにちは。
チベットの問題には、前々から心を痛めてました。
ダライ・ラマの著書の中で、キリスト教の神父からの質問で「チベット問題に対して私たちにどんな事ができるのでしょうか?」
という質問に対して、
「その問題は、チベット人の精神の自由が確保され、チベットに伝えられている霊性の伝統が死に絶えることなく生き続けることと、深く結びついていますから、それはまさに世界的な重要性をもった問題なのだ、と思います。今日の脅威のもとで、古代以来のチベットの霊性が生き残る事ができたとしたら、私の考えでは、それは未来のチベット人のためばかりではなく、中国人の幸福にも大きく寄与することになるだろう、と思えるのです。ですから、そういう視点からすると、人間の霊性に価値をおくすべての人々と、ほかの宗教の信者や宗教団体の方たちが果たす事のできる、特別な役割があると思っています。チベットの大義を支持して下さる事によって、大事な役割を果たす事ができると思います。」と話されています。

毎日の瞑想の実践が自分の中に慈悲の心を育て、役立てられるようになるための実際的な方法のようです。

関心を持って、自分自身にできる事を改めて考えてみたいと思います。
ありがとうございます。
Posted by シャンティ at 2008年03月23日 12:10
中国国内でも30人あまりの作家達が政府のやり方に反対声明を出した様です。北京オリンピックが出来なく成れば、ネットで話題の「予言」が、また一つ的中することになりますね。私は意図もせず、許可もしませんが。
Posted by 神ng now at 2008年03月23日 13:14
ご存知かもしれませんが、「ダライ・ラマの仏教入門」の訳者、イシハマ先生のブログです。

http://shirayuki.blog51.fc2.com/
Posted by ポチ at 2008年03月23日 20:20
 《転生》してくる高僧を探し出す誇り高き民族の崇高な儀式・・・

 《転生》など信じる筈のない よそ者、の中国政府はその神聖な行為を汚れた足で踏みにじった挙句、恥知らずにも『私達が(本物のパンチェン・ラマ11世)を見つけました』と言ってるわけなんですね・・。

 最近の中国政府の矛盾を押し通す会見をみると、吐き気を覚えます。
大国の大きな欲望から身を守る為に、チベット民族は あとどれくらい、血の涙を流すのでしょうか

 天安門事件から何一つ変わってないのですね
Posted by katabui at 2008年03月23日 22:31
阿部さんがダライ・ラマの記事を投稿された時に、そう言えば あの小さな男の子(パンチェンラマ11世)は今どうしているんだろう!?と思っていました。拉致されていたんですね。

一日も早く彼が彼らしく生活出来る為にも私もチベットの独立運動を支持したいと思います。
Posted by 檸檬 檸檬  at 2008年03月23日 23:35
阿部さんのブログを読んで初めて知り得ました。ありがとうございます。今回の事件は人類の霊性の危機でもあるのですね。普段からスピリチャルや精神世界のことに興味を持ってはいても現実的な政治的な暴力に対してどう戦っていけばよいのでしょうね。やはり無知ではいけませんね。このようなコメントしか書けずすいません。
Posted by yokoyama at 2008年03月24日 16:30
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